「マーガリンは毒だから食べません」ツイートの先生に物申す。

子育て・教育

毒があるのはマーガリン?



「今日の給食に出てくるマーガリンは毒なので食べません」と申し出た子どもがいた。嫌いな食べ物を無理矢理に食べさせる指導は元々していないので、その子は食べなかったのだが、周りの子はその言葉に動揺していた。僕は学校給食の高い安全性を信用している。そして食に関する指導の主戦場は家庭だ



めがね旦那@小学校の先生さんが2月末に投稿したこのツイート、かなりバズって話題になりましたが、みなさん、これ見てどう思いました?


わたしはめっちゃ不快になりましたね。


ツイッターは140文字までという文字数制限があるし、ツイッター独特の言葉や表現ってのもあります。


短いツイートの中で、それらは確かにキャッチーで効果抜群。

しかし、このツイートはそんな効果を狙っていい内容でしょうか?


もちろんツイッターのリプライやネットでは、【マーガリンは本当に体に悪いのか】が議論の中心となっています。
が、案の定、毒発言の児童への批判もチラホラ。


そりゃそうですよ。
発言の背景が全く書かれていないから、読み手の脳は『毒』『動揺』『戦場』、このバズ狙いの強烈スリーワードで児童のイメージを作り上げるしかないんです。


しかし児童ですよ。子供ですよ。
担任の先生が自分のことをまさかツイッターに投稿してるなんて知らないから、反論もできないんですよ。
わたし毒なんてひとことも言ってない!って言えないんですよ。 ←そもそも信じてないw


リツイートで拡散されるたび、メディアで取り上げられるたび、どんどん良からぬ方へと膨らんでいく児童のイメージ。


これ反則ちゃいます?


ツイ主にしてみれば勝手にイメージ増幅して拡散されただけの話、「そんなもん知らん」のでしょうが、仕掛け作ったんは誰やねん。


ってことで!


要所要所に小狡く置かれたイメージ増幅ワード、それがどんな風にわたしたちの脳で児童像を描かせていったのか、文字数制限のないブログでおもいっきり解説&再現してやろうと思います。



こうして児童のイメージは作られた!



まずはなんと言ってもここ、ツイートの冒頭部分です。


今日の給食に出て来るマーガリンは毒なので食べません」と申し出た子がいた




しょっぱなで児童のイメージの大半を植え付けるという上手い書き出し、惚れ惚れします。


強烈ワード”毒”に加え、「食べません」という挑むような言い切り口調。
これでわたしたちの脳には【自己主張の強い頑固なキャラクター】が誕生しました。


アウトラインが作られたら、次は細部を脳は要求します。

「今日の給食に出て来る」という部分から、事件が起こったのは給食の前、もしくは登校してすぐというwhen設定ができました。



さー ここからキャラクターがモンスター化していきますよ。



周りの子はその言葉に動揺していた




この部分から、児童は先生個人に言いに来たのではなく、みんなの前で堂々と言ったことがわかります。
前文の言い切り口調と合わせて想像すると、手を上げてすっくと立ち上がり、揺るがぬ強い意志と態度でもって、そのセリフを声高に言い放っている姿が目に浮かびます。


また、『毒』という言葉に「周りの子は動揺していた」という部分から、「僕は学校給食の高い安全性を信用している」と言っている先生すら何も言えず、「そ、、そうか、わかった」ってな感じで引き下がったことがわかります。

そして教室はざわざわざわ。。。



今、わたしたちは同じ光景を頭の中で見ています。
とある小学校、不安に包まれた教室、困り果てた先生、その中央にいるのは・・・

  • 自己主張の激しい子
  • 場の空気を乱しても平気な自分勝手な子
  • みんなが食べるものをみんなの前で毒呼ばわりした意地の悪い子
  • ヤバい親のいる子



こんなところではないでしょうか。


とにかく、このツイート読んでこの児童にいいイメージを持つ人などいるわけがないんですよ。
しかもその後に続く文章に、「戦場」という強烈な言葉をわざと噛ませています。
ここで、ああ現場の先生は大変なんだなぁと読み手に思わせる算段です。


文字が脳を操作する力、バカにできません。


しかし、わたしたちは騙されない



さて、このようにしてわたしたちの脳には児童のイメージができあがったわけですが、
今みなさん、モヤモヤしてません?


そりゃそうです。わかります。
わたしたちは普段から行間や背景まで読み込む習慣がありますから、今一緒にみている光景があまりにも一方的すぎることに違和感を覚えるんです。


ましてやわれら母族、子供の味方。
子育てママを応援する先輩ママ(ババ?)でもあるんです。


そんなわたしたちが今望んでいるのはただひとつ、発言の背景を母目線で推測し、一方的に悪役に仕立て上げられた子供を救出することではないでしょうか!?




おまかせください。



背景と行間を読んでいこう

なぜその発言が出たのだろう?



確かにマーガリンはトランス脂肪酸の件で体に悪いと言われていますが、最近では企業努力によってかなり抑えられているとか。


しかし、マーガリンの主成分は、なたね油やコーン油といった、いわゆるオメガ6系。
このオメガ6系の油は、認知症やうつ病の原因物質となるヒドロキシノネナールを生成するという話です。


もちろん、給食に出て来るマーガリン一個程度を毎日食べたところで、なんともない人が大半でしょう。
けれどわれわれ現代人、マーガリン以外に一切オメガ6系の油を取らないで一日過ごせるわけはないんです。


加えて生活環境は一人一人違います。
体質だって違います。


つまり、背景次第でたった一個のマーガリンが”毒”になり得る人がいるんですよ。



 背景その1. 生活環境


たとえば児童の家が商店街のコロッケ屋さんだとします。
コロッケはいわゆるサラダ油で揚げていて、余ったコロッケが毎日夕飯のおかずに出てくるんです。


なんか今めっちゃ昭和な話してます?www


まぁいい、続けましょう。
とにかくお父さんが丹精込めて揚げたコロッケ、苦労している姿も見てるし、学校から帰ってきてお手伝いすることだってある。マジ昭和w
飽きたとはいえ、捨てる選択肢などあるわけがないんです。


そういう理由で、児童の体は常にオメガ6がオーバーフロー。
とすると?
給食のマーガリンはたとえ一個でも”毒”となり得ます。


 背景その2. 家系


児童の家系には代々認知症の人がめちゃめちゃ多く、親がナーバスになっているのかもしれません。

ましてや子供は一人っ子で心優しい女の子。
そんな娘に、「お嫁に行ってもパパママが病気になったら絶対看病しに帰って来るから安心してね!」なんて言われた日にゃあ、親は嬉し泣きして一大決心するでしょう。


うちは認知症家系。将来この優しい子に迷惑がかからないよう、今日から植物油を断とう!


すると親の異変に気付いた娘がこう言います。

「パパママ、なんでパンにマーガリン塗らないの?美味しいよ。」
「うん、美味しいんだけどね、マーガリンはパパママには毒なのよ。」
「え!?そうなの!?」
「そうなのよ。でもあなたは食べていいのよ。」
「ううん、パパママが食べないならわたしも食べない!」
「娘よ!」
「パパママー!」


そうして親子は固く抱き合い、涙を流したその翌朝、「マーガリンは毒だから食べません」発言をしたとしたら?

あかん、おばちゃん泣けてくるわ~~~~~😭 



 背景その3. 育児不安


おまめ妄想劇場の最終話は、誰もが一度は経験する育児不安によるものです。


マーガリンには乳化剤が入っています。
これはカルシウムの吸収を妨げるリスクのある添加物なので、お母さんが子供の骨格発育に不安を抱えていたとしたら、避けたい食品筆頭になり得ます。


たとえばお母さんが妊娠中、超音波検診で主治医が画面を見ながらポツリとこう呟くんです。



この子、骨の形成が若干遅いな。



これこたえますよ~~~

そして更にその主治医は要らんことを言うんです。



体質かな



これ刺さりますよ~~~
抜けませんわ~~~



子育ては人と比べちゃいけないと言うけれど、その言葉を最初に言った人の子供はまったく心配いらない子供だったに違いない。


今のお母さん、一人で不安と戦っているんですよ。
結局誰も助けてくれない、全責任は母である自分にある、そう思いながら必死に子育てしてるんですよ。


その結果、誰かが言い放った何気ない一言に深く傷つき、子供と一緒に命を絶つところまで行くケースがたっくさんあるんですよ。報道されていない事件は数知れず



病んでる?
ええ、病んでますとも!
むしろ、育児中に病まない人などいないんじゃないですか?


そんな状況下、育児における全責任を負っているお母さんが給食に出て来るマーガリンを食べさせたくないと強く思ったとしても、一体誰が非難できよう?



もしわたしが担任だったら、家に行ってお母さんの手握って泣くわ。
お母さんの奮闘を心から労い、感謝し、そして謝罪するわ。
一人で悩ませてごめんなさい、って。



言葉の裏を見ていこう

事情を敢えて無視した理由は?




さてさて、毒発言の背景を3パターン妄想してみましたが、これ、あながち無い話じゃないと思うんです。
子供がここまできっぱりモノを言うからには、何かしらの事情アリと考えるべきですよ。


それをせずに、ツイッターという光景切り抜き発信ツールで、何の配慮もせず子供と親が一方的に悪者になるような言葉をチョイスしたところに、われわれ母族、不快感を覚えたんです。



『毒』という言葉も児童をモンスタライズさせた原因の一つとなって、snsで批判されているようですが、『どく』は短い音で尚且つわかりやすいため、親は子供に早い段階で教える言葉ですよね?


粘土やクレヨン食べちゃダメ、アレルギーの出るもの食べちゃダメ、その理由を3歳児に聞かれて長々説明する親っています?
ひとこと、「毒よ!」じゃないですか?


ましてや相手は小学生、おしめ取れてまだ10年経つか経たないかの子供なんですよ。
その子供が躊躇いもなく『毒』という言葉を使ったとしても、全然不思議じゃない。むしろ自然。


小学校の先生ならそこんところはちゃんと理解し、本来の意味と区別して受け取ってあげるのがフツーじゃないですかね?


何が言いたいかというと、子供が本当にそう言ったとしても、全国ネットでは誤解回避のために違う言葉に置き換えろってことです。


それをしないで投稿したのがわたしにはどうしても解せぬ。
無意識下で児童を悪役にしたい、もしくは学校の先生たいへんアピールをしたい心理が働いたとしか思えないのは、わたしが”穿ちババァ”だから? 誰やねんw


端々に滲み出る怖~い真実


しかしこのツイート、よくよく読み込むと諸刃の剣になってるんです。
先生や学校のびっくり仰天思想や価値観が見えてくるんですよ。


まずこの文。


嫌いな食べ物を無理矢理に食べさせる指導は元々していない




昭和時代と違って無理やり食べさせるのは虐待になるんで、今はどこの学校にもそんな指導は存在しません。
嫌いなものは食べなくていい。これがイマドキのスタンダードです。


まぁネットでの上げ足取り防止としてこの文言を入れたのでしょうが、それなら「嫌いな食べ物を無理矢理に食べさせることは当然していない」とするのが自然でしょう。
字数も同じ27文字です。


なのになぜ、わざわざ『指導』というきっつい言葉を使ったのか?


それがこの先生の児童に対するスタンスだからです。
子供は育むのではなく強い力で制するもの、そういう主義なんですよ。


その証拠に、嫌いなものは食べなくていいことになってるのなら、なんでこの児童はわざわざマーガリンは食べませんと先生に言う必要があったのでしょうか?


こういうのってね、言葉の端々に滲み出るものなんですよ。




次にここ。

食に関する指導の主戦場は家庭だ




『戦場』ですよ、みなさん。
このツイートは2022年2月28日に投稿されてるんで、ロシアがウクライナに侵攻した直後です。
そのタイミングでこの言葉を投入するなんて、バズ狙い以外に考えられます?


加えてこの『戦場』、モンスター親子のせいで教師はホント大変、現場は常に戦々恐々、というアピールの役割も果たすという、コスパ最強ワードとなっています。



でもね、この主戦場、よーく読み込んでみると、ちょっと怖い解釈がふたつ浮かび上がってくるんです。
そう、端々に滲み出ているんですよ。


見る勇気のある方だけ、どうぞ読んでください。



 【主戦場】ちょっと怖い解釈その1



食事は『指導』が必要なほど重要なもの。
常に戦闘態勢で臨むもの。
だから我々はその指導の場を『戦場』と呼んでいる。
しかしその主戦場は残念ながら家庭、学校は副戦場となっているのが現状。
これは大問題。

学校は家庭から主戦場の地位を取り戻さねばならぬ!



 【主戦場】ちょっと怖い解釈その2



食事は『指導』が必要なほど重要なもの。
常に戦闘態勢で臨むべきもの。
しかし学校での戦い=指導はいまひとつうまくいかない。
その理由は親が邪魔をするから。
われわれ教育者にとって真に戦う相手は食事ではなく親。
だから親のいる家庭こそがわれわれにとっての主戦場なんだ!




なんてオソロシイw


この解説をご本人に見せたら【違う】と反論するでしょうが、そう取られかねない微妙な言葉のチョイスをしてるんですよ、この先生。


いや、『取られかねない』というのは語弊がありますね。
こちら著書もたくさんお出しになっているわれわれよりずっと若い現役の先生、しかもフォロワー4万人のツイッタラー。
そんな方が言葉のチョイスを誤るなんてありえません。
つまり、わたしの解釈は真を突いているということでしょう。


やっぱりね、滲み出て来るもんなんですよ、端々に。


指導という言葉




『戦場』もさることながら、2回出てきた『指導』という言葉、これわたしどうしても流せない。


指導はもちろん『教え導く』という意味ですが、実際にはもっと強い意味を持ちますよね?
明確に、上から下へ、主から従へ、強い目的意識を持って力を加えることを指しますよね?


だから現場では『指導』という言葉を軽々しく使ったりはしません。
見過ごせない場面において、先生が生徒を呼び出して叱る、説教する、後日親にも来てもらう、そういうやむを得ない場面でのみ使う言葉なんですよ。


現にこの先生も、上で解説したように『戦い』という意味で『指導』という言葉を使っています。


ましてやシーンは給食ですよ。
食事ですよ。
ここでその言葉使う?


いや、病気になって栄養士さんから食事指導を受ける、これならわかるんですよ。
しかし学校でしょ?ライザップでもないでしょ?
しかもおしめ取れて間もない小学生相手に、食べるという楽しみの部分で『指導』のスタンスってどうよ?


ってか、そもそも小学校では『指導』と言わずに『教育』と言うんじゃなかったっけ?
大学の教育課程でそう教わった記憶があるんだけどなぁ?
この先生の学校では違うのかなぁ?



まぁなんにしても、この先生は自分を教育者ではなく指導者と思っているのは確かでしょうね。きむじょんうんか



最後に




文字数制限のないブログで長々吠えたくりましたが、わたしもツイッターに倣って短い言葉で今の気持ちを要約したいと思います。




大事な子供をネタにすな💢



以上。



言葉を削りに削った最小の文章で最大の効果を狙うツイッター、そりゃあ『毒』とか『戦場』とか刺激的なバズワードを入れたくなるのもわかります。


けれどそれは自分のプライベートな話題でやればいい。
言葉のチョイスをミスって誤解を生んでも批判されるのは自分だから。


今回のこのツイートは間違いなく子供を晒しものにして傷つけました。
教育についての自論はいくらツイートしてくれてもけっこうですが、大事な子供をネタにしてバズ狙い、これは同じ教師として許せません。



とにもかくにも、狙い通りツイートがバズって満足されたでしょうから、このあと児童とその親御さんにしーっかりと事情を聞き、クラスの中で実のある話し合いをされたことを願ってやみません。


ま、たとえそうしなかったとしても、われわれ母族はこの先生が思っているほどバカじゃないんで、不安を抱えて帰宅した子供たちには、それぞれのお母さんがちゃ~んとフォローしてくれたはず。


確かに親は教師の敵となりうる世知辛い時代です。
けれどその一方、親は教師のお粗末な対応をフォローしてくれる頼もしい味方でもあるんですよ。


われわれ教師、そのことをけっして忘れてはなりません。


戦闘態勢を解除すれば見えて来るもの、この先生にも見える日が来ますように。

コメント

  1. おまめ おまめ より:

    ketaちゃん(^o^)丿
    まずはお誕生日おめでとう❣
    素敵な一年になるよう、大阪から祈ってるよ✨

    忙しい中、ブログ(しかも長編!)読んでくれてありがとう💗

    >児童がわざわざ
    >「指導」とか「戦場」という単語は使わなくても良かったんじゃ
    >そもそも本当に「毒」という単語を使ったのか、言葉を発した時の
    状況や抑揚等も不明

    でしょでしょでしょ!?

    けれどあの140文字世界が今や世界を作ってると言っても過言ではないんだよ。
    過激なバズワードで煽った人が、たとえ捏造ツイートだとしても、事実となり正義となるんだよ。

    この恐ろしさ、われわれスルーしちゃいけないと思うわ。

  2. keta より:

    うおーーー!
    最近めっきりSNSから離れていてこのツイートは知らなかったのですが、
    原文を読んで感じたなんとも言えない気持の悪さというかモヤモヤ感。
    おまめ様の解説で、すっきり(いや、内容はムカムカものなんですが)しました。

    そうですよね。普段から食べることを強制していないのであれば児童がわざわざ
    「これは食べない」と宣言する必要ないですよね。
    まぁ、ものすごくツイート主さんに寄り添って考えると、児童側が目立ちたいとかの
    気持で宣言しちゃった可能性も無くはないとは思いますが、その場合でも
    「指導」とか「戦場」という単語は使わなくても良かったんじゃないかと思いました。

    この発言をした児童(そもそも本当に「毒」という単語を使ったのか、言葉を発した時の
    状況や抑揚等も不明なのですが)が不当にダメージを受けていないといいなぁ。